東神経生理検査技術研究会 所司 睦文 会長・小野澤 裕也 副会長ご執筆

臨床脳波検査スキルアップ 第2版

脳波検査に苦手意識を持つ臨床検査技師は少なくない。とっつきにくいと思われがちな脳波検査を簡明に解説し好評を博した初版から5年。改訂にあたっては、ビギナーからエキスパートまで満足できる内容を目指し、5年間で変化した用語・疾患概念等を加味しながら、初版の内容をいちから見直した。新たに脳死判定・頭蓋内脳波の章を立て、脳波波形図・イラスト・提示症例を大幅に追加した。基礎から応用まで網羅的に学べる1冊!

出版社 金原出版株式会社
発行年月 :2017年9月5日
ISBN :978-4-307-05051-7
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Book Review (初版)

臨床脳波検査の重要性は誰もが認めることですが、それを専門とする医師や技師が充足されていません。特に医師は大学において脳波の教育時間が少なく、更に判読を教育する先生が少ないので脳波判読医が足りない現実があります。そうなると脳波検査の依頼が少なくなり、臨床検査技師の仕事にも差し支えます。

そこで臨床検査技師が脳波の解析をすれば良いのですが、現実は脳波を取りっぱなしの検査室があまりにも多いことに驚かされます。自分が記録した脳波がどのように判定されているかの確認が必要です。脳波検査をしている検査技師は経験の行かんを問わず患者様にとっては全員がプロの脳波技師なのです。

そこで平成21年から関東神経生理検査技術研究会は所司睦文先生を中心に会員の中から「脳波の解析を勉強したい」「所見を書きたい」と希望される方々を対象に「臨床脳波検査スキルアップ2009?2011」を実施して、好評を得ております。その時、所司先生が作成されたテキストを研究会参加者に配布されたがそれに手を加えて、今回金原出版株式会社から出版の運びとなりました。

構成は7章からなり、「第1章 脳波計側」はデジタル脳波計の仕組みとA/D変換、さらに誘導法は大変分かり易くまとめられておりました。「第2章 基礎律動(基礎波)の評価」は私たちが脳波所見を記載する際に記録のどの部分がその被検者の基礎律動かの判定に苦しむことがありますが、それを明瞭に記載されておりました。「第3章 脳波賦活試験の評価」では賦活の方法と反応について、開閉眼賦活試験、閃光賦活試験、過呼吸賦活試験、睡眠賦活試験について実際の図を提示して分かり易く、睡眠賦活試験の項では睡眠段階の特徴について解説されていました。「第4章 脳波に混入するノイズ」では日常の脳波検査でよく見られるアーチファクトについて判別法と対処法をまとめられました。「第5章 疾病・病態と問題脳波」ではてんかんの脳波と重篤な脳障害の脳波について記録の要点を含めて解説されています。「第6章 臨床脳波の実際」では正確な脳波の取り方について要点をまとめて先生自ら描かれた図で分かり易く解説されていました。「第7章 臨床脳波所見記録書の書き方」は脳波所見を書くための基礎知識をまとめられました。この項は技師が脳波所見を記載する必要に駆られてまとめられたもので、技師が所見を書くようになれば脳波検査依頼が増えるばかりか、全ての技師が所見を書ける実力を備えて脳波記録に携われば記録にメリハリ出て、臨床上有用な情報源になることが期待されます。

最後の「補章」では日頃先生が教壇に立たれて生徒への思い入れの一端が垣間見ることができました。

私はこの本を手にして日常忘れがちな基礎知識を補いながら、一機に読破致しました。要所要所にコラムが挿入されてちょっとした豆知識を読むのも楽しいものでした。

臨床脳波検査に従事している技師は勿論のこと、これから脳波検査に従事する方々の座右の書となることは請け合いです。

平成24年3月27日
関東神経生理検査技術研究会
会長 末永和栄

「臨床脳波検査スキルアップ」を読んで

著者は川崎医療短期大学で教鞭を取ると同時に、臨床神経生理検査に従事している臨床検査技師のスキルアップに貢献しています。しかもユーモアにあふれた楽しい講義です。

本を開いて第一印象は、脳波の発現機序や脳波計の原理などが著者独特のユーモアに満ちたイラストや解説で極めて分かり易く、初心者でなくても納得いくようなものでした。

脳波波形も症例を提示し、次のページで波形の解釈の順序がカラフルに解説してありますので、波形を判読する時に、どんな順序で考えたら良いか解説されています。

しかも、原波形に解説文を重ねるのではなく、他のページにイラスト付きで解説しているので、読者は原波形を自分のレベルで判読し、次に著者の解説を見れば、より理解が深まるであるように工夫されていまました。同時にクイズを考えるような楽しみと、誌上を通して著者と読者の会話が出来ることも、この本の特徴であろうと思われます。

教科書的なこの種の本としては、敢えて贅沢なページ設定で編集されていました。

著者が序文に書いていますが、臨床生理学は、呼吸・心機能、脳波・筋電図の神経生理、超音波などの画像関係などなど広範囲の基礎知識を必要としています。

その上、波形もさまざまです。特に脳波の波形は、複雑で臨床経験のない学生にとっては理解し難いのは無理もないところです。

私自身も臨床検査技師養成学校で非常勤講師をしておりますが、スライドや補助プリントで何とか学生に理解して貰おうと努力していますが、「脳波波形のどこに注目したら良いか分からないヨ?」と学生に言われて「これ以上、どう説明しようか・・」と悩むことがまれではありません。

今回の著書を読ませていただき、いろいろ教えられることも多くありました。

これからの講義に利用させていただこうと考えた次第です。

平成24年4月6日
関東神経生理検査技術研究会 石田哲浩

本書は臨床脳波の検査技術から脳波像の判読まで臨床脳波全般を網羅しており、黒赤の2色刷りで多くの図表を使い臨床脳波検査にかかわる検査技師にわかりやすく書かれている。特に重要な語句や検査を施行する上でのポイント、注意点は赤文字で示され、図においても着眼点等が色刷りされ丁寧な解説がなされている。また、脳や脳波に関するコラム欄を設け臨床脳波への興味を抱かせるように本の構成に工夫がされている。

というのも、著者は自身の長年の臨床脳波の検査経験や指導経験から脳波検査に関わる技師がつまずくところをしっかり捉えて書いており、そこには「分かりにくい」脳波を理解してもらい、興味をもって脳波検査に取り組んで欲しいという著者の願いがあるからだと思う。

本書は初めて現場で脳波検査に関わる検査技師は勿論のこと初めて脳波判読に関わる医師のテキストとしても、経験者には再度自分の知識や技術を確認するための書としても薦めたい一冊である。

平成24年7月14日
北里大学 伊賀冨栄